2022年8月24日、京セラ創業者の稲盛和夫さんが逝去されました。
筆者は経理職に就いた十数年前、先輩から『稲盛和夫の実学 経営と会計』を手渡され、以来たびたび読み返しています。
この本は、単なる会計書ではなく、「経営を動かすための会計とは何か」を問いかける一冊です。今回は、その魅力と実務で役立つポイントをご紹介します。
本の概要
京セラを創業し、KDDI創業し、日本航空の立て直しをしたカリスマ経営者の稲盛和夫さんが『会計がわからんで経営ができるか』という思いで出版した本です。
- 著者:稲盛和夫(京セラ・KDDI創業、日本航空再建)
- ページ数:約200ページ(文庫本)
- 出版:1998年
- 内容:経営者の視点から「経営にとって会計とは何か」「正しい会計とは何か」を解説。
流行りのハウトゥー本やカラフルな入門書のような図表やイラストが沢山というわけではなく、ほぼ文章だけの本です。しかしながら、説明が分かりやすく非常に読みやすい本です。
いわゆる「決算書の読み方」ではなく、会計とは何か、正しい会計とは何か、という会計の本質と、それを会社にどう適用していきべきかを、経営者の立場から分かりやすく説いています。
減価償却の耐用年数を実態に即して設定すべきという考え方など、IFRSにも通じる内容が含まれており、出版から20年以上経った今も色褪せません。
特におすすめしたい読者層
会社員全員におすすめの本ですが、特におすすめの読者層です。
経理部門、経営企画部門
毎月の決算や予算策定に追われ、「もっと経営者の意図を理解できれば…」と感じたことはありませんか?
本書は、経営者が会計に求める本質を知ることで、数字を“作る”経理から、経営を“動かす”経理へと成長する道を示してくれます。
新入社員からベテランまで、業務の質を一段上げたい方に強くおすすめします。
内部監査部門、内部統制担当部門
「なぜこんな面倒な手続きが必要なの?」――現場からの不満や反発に、心が折れそうになる瞬間はありませんか?
稲盛氏は、正しい会計のためには正しい事務処理が欠かせないと語ります。
モノの動きと伝票の動きは対応させる「1対1の対応」やミスや不正を防止する「ダブルチェック」といった当たり前の仕組みの背景を、経営の原点から理解できるため、現場を説得する言葉が変わります。
経理部門や内部統制部門以外の管理職
「うちはお金を扱わない部署だから関係ない」と思っていませんか?
実際には予算管理、備品購入、部下の申請承認など、会計と無縁ではいられません。
本書は、承認やルールの背景にある経営の考え方を知り、チーム運営の精度を高める武器になります。
監査法人や内部監査の監査対応をしないといけない人
監査法人や内部監査からの指摘に、「うちは真面目にやっているのに…」と感じたことはありませんか?
本書は、なぜ監査が細かい事務処理を求めるのか、その本当の理由を経営者の視点で解き明かします。
後には、監査を“負担”ではなく“組織を強くする仕組み”として捉えられるようになるでしょう。
まとめ
『稲盛和夫の実学』は、会計や内部統制を単なる事務ルールではなく、経営の土台として捉える大切さを教えてくれます。
経理や監査の現場で迷ったとき、判断の軸を与えてくれる数少ない本です。
実務の質を上げたいと願うすべてのビジネスパーソンに、一読をおすすめします。
- カリスマ経営者の目線で書かれた会計、内部統制の本質が分かる本
- 文庫本で200ページ弱と数時間で読める分量、説明も分かりやすく読みやすい
- 経理担当者、経営企画、内部監査、管理職など幅広い層に有益
- 時代を超えて通用する考え方を提示

今日は、『稲盛和夫の実学』について紹介しました。
初めて読んでから10年以上経っていますが、何度も読み返す数少ない本です。

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